私(獣師)と、あいつ(神獣)
肆・新生活、開始
「っう――ん!い―い天気―!」
翌朝、スッキリとした目覚めで、上機嫌な弥生は背伸びと欠伸を一つして、
朝の、何とも言えない新鮮で、冷たい空気を感じながら長い廊下を歩いていた。
「あ、九ちゃん!おはよー!」
「お早う御座います、姫様。今朝は良いお目覚めで?」
「うん!も―バッチリ!」
笑顔で、答える弥生に、九平も優しく笑って
「それは、何よりで御座います。朝御飯の支度が整いましたので、居間へ集まる様に、と主から伝言を仰せ付かっておりますよ。」
と言うと、弥生は長い廊下の木を軋ませながら走りだした。
「九ちゃん!行こう行こう!」
「あ、姫様!余りお急ぎになられると、転びますよ。」
「大丈夫、大丈夫!もう、子供じゃないんだから!」
振り返り、弥生は九平に笑い開ける。と、
「うわっ!!」
急に、方向転換をした為、足が滑りそのまま弥生は後ろへ倒れて行く。
「姫様!」
咄嗟に九平は動き、弥生の後頭部に手を添えようとすると、それより先に
横から何者かの手が伸びて、そして、弥生の腰にも手が添えられて支えられた。
「わ、っと・・・・?」
「・・っ!お前は!」
顔を上げた九平が、一瞬にして眼を鋭くする。その視線の先には
「・・・・朝からうるせ―んだよ、てめえ。」
「・・・・・・・あ!」
残酷なまでに赤い瞳で、見下ろしている、昨日弥生が召喚した神獣が居た。