私(獣師)と、あいつ(神獣)
――――あれは、本気の殺意。
一瞬で分かった。
痛いほどの殺気が零斗の真っ赤な目から滲み出ていたから。
そして、私の頭の中に只一言、浮かんだ。
優希が、危ない。
「・・・・・・っ!!」
咄嗟に身体が動き、私は優希と零斗の間へ滑り込んだ。
その瞬間が、酷くゆっくりに思えた。
零斗が、目を見開き、口が何かを言いかけてそのまま、半分開いた様な形に。
そして、私の目の前に、零斗の手が近付いてくる。
私の視界が、零斗の手で覆い尽くされようとした時、その指と指の僅かな隙間から、見えた零斗は
見間違いかもしれない
気のせいだったかも知れない
でも、私には確かにその時の一瞬の、零斗の表情が
泣きそうな、哀しそうな顔をしている様に見えた。
「っ弥生!!!」
ガシャアアアンン!!!!!!
――――――――結構煩いなぁ・・・・・・。
やけに、遠くから聞こえる大きな音に、私は他人事の様に思った。
そして、私の視界は、何処を映していたのか分からないけど
闇に溶けて行く世界に、最後に浮かんだのは、あの時の零斗の表情だった。