私(獣師)と、あいつ(神獣)
私は、随分長い事寝ていたようで、起きた時には学校は放課後だった。美央と香凛は、塾があると言って先に帰り、優希もピアノがあると、やはり先に帰った。
つまり、私は今、一人であり、いや正確には何人かの生徒がまだいるが、見知った人はもういない。鞄を持って下駄箱から靴を落とし、適当にトントン、とつま先を鳴らして履く。
外に出ると、もう六時だと言うのにまだ、辺りは朱に近い燈色に染まっていて少し明るい。夕方特有の温い風が私の頬を撫でてゆく。
さっきまで、ガンガンに冷房の利いた保健室で寝ていたので、その温い空気は、肌寒く感じていた身体には、丁度良かった。
「はぁー・・・。」
本来なら白いはずの雲は、赤になっていて、乱雑に引きちぎった様に、バラバラに空に散っている。
「赤・・・・。」
その赤を見て、私はあの深紅の神獣を思い出してしまった。
・・・・・・・・うーん。あいつが来てから、私はよく胸焼けが起きる様になったと思う。
今も、無意識に胸の辺りを手で触っていた。
「・・・・やめよ。」
赤い空から視線を外し、濃く映った私の影に目を落とす。
そのまま、しばらく下だけを見て歩いていると、校門を出たと思われる時に、視界の端に見覚えのある靴が。
「・・・・・・・・?」
何処で見たっけな・・・・?そう思いながら、サッサとそこを通り過ぎようと歩調を早めた瞬間
「おい。」
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
「おい、小娘。」
・・・・・・・・・うん、よし。
・・・・・・・・無視だ。
走ろうと、つま先に力を入れようとしたら
「人間の分際で、この俺様を無視して良いとでも思ってんのか小娘。」