私(獣師)と、あいつ(神獣)
まさに、言葉通り《後ろ髪を引かれ》ました。
「痛ッ!!」
文句を言ってやろうと、髪を押さえながら振り向くと
「な・・・っ!」
思いの外、距離が近かったようで、目の前には深紅の瞳。
驚きで固まってしまった私の髪を離し、目の前の零斗は少し離れる。
「・・・・・・背中は。」
「え?」
行き成り口を開いた零斗に反応が遅れ、しかもそれが単語だとますます分からないので聞き返してしまった。
「背中は、どうだと聞いてるんだ。お前からの質問なんざ聞く気は無い。」
ギロリ、と本当に目だけで、人を射殺せそうな勢いで、零斗に睨まれる。
「えぇー・・・・・。」
「さっさと答えろ。・・・・・・・その様子じゃ、大した事はなさそうだな。」
私の体全体を、軽く見た零斗は、鼻を鳴らしてサッサと背を向け歩き出してしまう。
「あ・・・・っあのさっ!」
段々遠ざかる零斗の背に向かって、急いで声を掛け直すと、ゆっくりと赤い瞳が私の方を見据えた。
「・・・・・・・何だ。」
「え、っと・・・あ、あの、あのね。」
《保健室まで運んでくれたのって、零斗だったの?》
とか、
《もしかして、手当も零斗がしてくれたの?》
とか、聞きたい事はたくさんあるのに、その深紅の瞳で真っ直ぐに見られると、何故か胸が痛くて思う様に考えがまとまらない。
しかも、それでさらに慌てて、もっと訳分かんなくなっちゃって・・・・まさに、悪循環だ。
「用が無いのなら、俺は行く。」
「えっ!あ・・・~~~~っ!!!」