私(獣師)と、あいつ(神獣)
「あ、申し訳御座いません!何処か、痛む所が・・・・!?」
すぐに、私の背中から手を離し、私の顔を覗き込む九ちゃん。
金色の瞳が、私の奥の奥を見つめる様に、真っ直ぐ射抜く。
「あ・・・、へ、平気。ごめん、薬頂戴?」
「・・・・・・どうか、なさったのですか?」
思わず、その視線から逃げる様に軽く目を逸らしてしまった。
その一瞬を九ちゃんは見逃さなかったらしく、さっきとは打って変わった真剣な声で、また私を見詰める。
「平気だから。大丈夫、大丈夫。」
「・・・・・・・姫様。」
「・・・・・・・・っ」
促す様に、ハッキリと九ちゃんは言い放った。その声に、思わず息が止まる。
私の、出掛けた腕を取り、顔の距離を縮める九ちゃん。
「・・・・・・・・何か、隠していませんか?」
「な、なにも隠して、無いよ。そんな・・・平気、だから。」
「背中、どうなさったのですか?」
ゆっくりと、私の背中を撫で、九ちゃんが空気を、私の鼓膜を震わす。
その声が、その瞳が、いつもと何だか違う様な気がして、背中に冷たい汗が流れる。
自分の出した声が、掠れているが、そんなの、気にならない位、心臓がバクバクと動いて、
初めて、九ちゃんを、怖い、と感じた。