《Mimics》
私の目の前にあるテラスは、両開きの扉とは全くの逆側にあり、その両脇に窓がある。
扉から見て右手側、その壁に並んでいる2つの窓のうち、手前側の窓の前にセリーヌは立っていた。
床にそのまま置かれている大量の水色のカーテン。
その中の一枚を抜き取り、扉の前まで歩いていく。
扉の前に敷いてあるカーペットを捲りあげ、その下のフローリングの床の上にカーテンを広げる。
セリーヌが満足そうに腕を組む。
いつの間にか、アレクシアがマッチと筒型の何かを持ち、隣に立っていた。
「古典的なワナに弱いのよね、リゼットって」
「ふふ、ただ布を引っ張り転ばすだけというのに、罠と呼べるのですか?」
「呼べるわよ。その大昔人類は、落とし穴を使ってマンモスを仕留めたんだから」
「コレ、落とし穴ですらないですわ」
「家に大穴作れって言うの?そんな簡単には無理よ」
「まるで、時間があれば作れるとでも言うようだけど‥‥」
私が何気なく口を挟む。
わざとらしく笑みを浮かべながら。
「時間がないから無理だと言ってるでしょう?」
セリーヌにきっぱり言われた。
しかし、否定しないってことはこの2人、家に穴でも作ったことあるのだろうか‥‥。
口元に手をよせる。