《Mimics》
ここにはじめて来たのは、もう百何十年も前のこと。
あのころの私は‥‥
「‥‥」
後ろを振り返って、今までもたれかかっていたショーウィンドウの中を覗き込む。
ウェディングドレスって名前の服。
人間が結婚するときに着る、特別な服。
可愛い、と思う。
私も着てみたいと普通に思っている。
でも、あの頃はそうじゃなかった。
金髪のゆるい巻き毛だったころの私。
服などに興味もなく、髪も伸ばしっぱなしだったころの私。
『人間』になど興味もなかったころの私‥‥。
そっとガラスに触れる。
あのころの記憶が蘇ってくる‥‥。