《Mimics》
・セリーヌ
自分達を『人間』と呼ぶ生物。
そんな虫けらになんて興味もない。
何も感じない。
人間は、自分達こそが全ての生き物の中の頂点に立っていると思い込んでいる。
私たちはそれを見て、人間に対し、教えを説くつもりなどない。
馬鹿な思い込みだ、愚か者、と下げずむわけでもない。
ただ、見ているだけ。
人間が蟻の行列をじっと観察しているのと一緒だ。
いや、人間の方が酷いのではないだろうか?
人間はその蟻をぎちっと踏み潰すではないか。
ぱさり、と自分のゆるい巻き毛を手で、後ろへ追いやりながら仏頂面をする。
素足で地面を歩く。
レンガで造ってある橋だ。
ひんやりとして気持ちいい。
橋を渡りきったその先に、長い蟻の行列が道を横断している。
ぺた、ぺたと歩いていく私。
少し、早歩きになっている気がする。
蟻の上を通り過ぎる。
蟻に対して興味なんてない。
『人間』に興味がないのと同じように。
だから、蟻を踏み潰した。
足の裏に、気持ちの悪い感覚が残る。
それでも、私はゆっくりと歩き続けた。