《Mimics》
3里ほど歩くと、ある街に出た。
人間は、こういう場所を街と呼び、そこに建っているものを建物や家と呼ぶ。
最近、『てつどう』と呼ばれるものが開通したらしい。
人間は便利な世の中になった、と喜んでいる。
さっき、そこらへんの水道で足を洗い、肩にかけている袋の中からぺったんこの靴を出し、履いた。
素足でいると、不審がられるからだ。
服は、薄っぺらい一枚の布を腰のリボンで縛っているようなものだったので、白っぽいドレスを店で買い、着替えた。
腰の辺りが大きなリボンできゅっと結んである。
そこの中央に向けて下の右と左のフリルが絞られているようなつくりだ。
首周りは、腰のリボンと同じ色のピンクのリボンがついている。
その下から胸元にかけて、これまた白いフリルが何十にも重ねられている。
白は好きな色だし、リボンと、フリルの端だけがピンクになっているのが特に気に入った。
店をのぞいたとき、真っ先に眼に入ってきたこのドレス。
これを買うときの店員の顔は笑えた。
現金で払うとき、店員は噛んでいたな。
あの格好の私が、大金を持っていたことに驚いたのだろう。
普段は人間の格好などしないが、今日は特別だ。
何せ、人間がいる、『ココ』に来てしまったのだから。
ドレスを見、人間もたまにはいい仕事をするなと思った。
ちょっぴり気分が良くなる。