《Mimics》
私は、早く『用事』を済ませようと思っていた。
その為に『ココ』にいるのは、人間の時間単位で1年のつもりだった。
だが、『ココ』があまりに広いことを知り、それが無理だとわかったのだ。
だから、掟にもとづき羽を隠し、ドレスを着た。
長く居座るのだったら、人間らしくしなくてはいけないかな、と思ったのもある。
掟で、『汝ら、長期間の滞在の場合、人間らしく振舞うべし』と記されているのも、それが大体の理由なのかもしれない。
掟の内容は、全て知っているわけじゃない。
基本しか知らないのが現状だ。
他の者たちも同じだと思う。
ドレスのすそが微妙に地面についてしまう。
これでは、地面を掃除しているようなものではないか。
右手で、ドレスを上に持ち上げる。
腕が疲れるけど、しょうがない。
ドレスと一緒に買った、日傘を左手に持ち、差す。
服を買ったりするのに使っている金は、私よりも年長である仲間からもらっている。
その仲間は、何回か『ココ』に来た事があるらしく、かなりの大金を持っていた。
それを分けてもらったのだ。
だが、これからも長く『ココ』に居るのなら、『金』と呼ばれる物は、自分で稼がなくてはならない。