《Mimics》

しばらくは大丈夫だと思うけど。

私は仲間からもらった金をいろんな場所に隠してきていた。

『ココ』に来てすぐに。

金は荷物になったから。

かなり深く埋めたから、見つからないだろうし、何箇所もある。

必要なときに掘り起こせばいいだろう。

溜息、はつかない。

視線を前に向け、ゆっくり歩く。

青空が日傘の隙間から見える。

遠い場所にある故郷を思い出す。

感慨にふけるつもりはない。

そんなの、人間がすることだ。

故郷をでて、人間の時間単位で1週間もたっていない。

横に並んでいる建物が途切れて、広場のような場所に出た。

その中央には、白い大きな噴水があった。

噴水の中央の白い、1メートルほどの管からでている水が、太陽にあたりきらめき、まるで宝石のような光を放っていた。

その横を通り過ぎる私。

そもそも、何故人間が溜息をつくのか不思議だ。

溜息とは、人間が何かに失望したとき、あるいは心を動かされたときに行う動作らしい。

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