《Mimics》

金をくれた仲間が教えてくれたのだ。

そのとき、彼はこうも言っていた。

人間は、私たちのことを『妖精』と呼ぶのだと。

人間が自分達と『妖精』の違いは、背中に羽があるかないかだけの違いだと思っていることも。

それが間違いだと気づきもせずに、ずっと信じているのだと。

くだらないと思ったが、彼には金をもらった礼があるのでぞんざいには出来ず、へえ、そうなんだと感心しているふりをした。

役に立てて良かった、と彼は笑っていた。

が、彼は、人間に興味があるようには見えなかった。

いうまでもなく、私たちの仲間は例外を除き皆、人間になど興味がないのだろう。

肩にかけている濃いグリーンの袋が肩からずれる。

袋を持ち直し、歩みを進める私。

広場にいる人間たちは、皆なんとなく、私を見ている気がする。

人間達は、怪訝そうな顔つきをしている。

私は特に気にしなかった。

近づいてくる人間がいた。

話しかけられるかもしれないな。

こちらにくるのは若い、まだ20歳程度の人間の女だ。

あくまで歩みはゆっくりしたまま、足を進める。




< 9 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop