《Mimics》
金をくれた仲間が教えてくれたのだ。
そのとき、彼はこうも言っていた。
人間は、私たちのことを『妖精』と呼ぶのだと。
人間が自分達と『妖精』の違いは、背中に羽があるかないかだけの違いだと思っていることも。
それが間違いだと気づきもせずに、ずっと信じているのだと。
くだらないと思ったが、彼には金をもらった礼があるのでぞんざいには出来ず、へえ、そうなんだと感心しているふりをした。
役に立てて良かった、と彼は笑っていた。
が、彼は、人間に興味があるようには見えなかった。
いうまでもなく、私たちの仲間は例外を除き皆、人間になど興味がないのだろう。
肩にかけている濃いグリーンの袋が肩からずれる。
袋を持ち直し、歩みを進める私。
広場にいる人間たちは、皆なんとなく、私を見ている気がする。
人間達は、怪訝そうな顔つきをしている。
私は特に気にしなかった。
近づいてくる人間がいた。
話しかけられるかもしれないな。
こちらにくるのは若い、まだ20歳程度の人間の女だ。
あくまで歩みはゆっくりしたまま、足を進める。