†Bloody Cross†
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首筋から自分の牙を抜き取れば、小さく開いたふたつの牙跡から少量の鮮血が流れる。
崩れ落ちるのを支えながら彼方を見やれば、まだ楽しげに笑いながら俺らを見つめていた。
「喰べ終わった?」
「あぁ、量は抑えて喰ったけど……どうする??」
自分の顎を流れた血を手の甲で拭い、拭った手の甲に着いた鮮血を舐めとりながら彼方に問う。
彼方はぐったりして少し顔色の悪くなった少女を一瞥すると、首を横に振った。
「時間ないし、いいや。傷塞いどいてあげてね??」
「……分かってる」
さっきまで飢えたような目で見てたくせに、白々しく心配でもしてるかのように……。
「んじゃ、僕は先に教室に戻るよ。その子の記憶消しちゃうから、ちょっと貸してくれる??」
ふと思い出したように俺らのほうに近付いてくると、緩やかな動作で少女の額を撫で上げる。
彼方はそのまま背を向けて校舎に歩いていく。
「はぁ……こういう時の彼方はやりにくいったらねぇな」
歩き去る彼方の背中が見えなくなってから、俺は盛大に溜め息を吐き出した。