†Bloody Cross†
「ふっ……やはり貴様は気付いていなかったのか。吸血鬼といえど、使わなければ能力の持ち腐れだな」
「俺が……何に気付いてなかったって??」
独り言のように呟かれるその言葉は俺に対する明らかな侮蔑を含んでいて、密かに腰に隠してある短剣を握り締めた。
短剣にゆっくりと伸ばした俺の腕を、ソイツは暫く冷めた目で見た後その瞳を俺の姿に合わせた。
「さっきまで蒼が俺と共に居たのだぞ?本当に気付いていなかったのか??」
「いつから、てめぇらは俺らを見てたんだ??」
間髪いれずにそう問えばソイツは本気で驚いたようで、目を見開いた後、躊躇いがちに瞳を瞬いた。
「驚いたな、本当に気付いていなかったなんて……。どうやら、もうひとりの吸血鬼は俺達に気付いていたようだったがな」
「彼方が……??」
そんな仕草、一度も見せなかったのに……彼方は本当に気付いてたってのか??
でも、確かにあいつ……今日ってかさっきは妙に楽しげだった気はするな。
それが、コイツらの気配を感じ取っていたせいだっていう確証はねぇけど……。