†Bloody Cross†
「俺達は貴様がその女と此処に現れた時から見ていた。吸血鬼とやらが食事をするさまは、まるで血に飢えた獣のようだったな」
再び紅眼をスッと細め、鼻で俺を嘲笑いながらソイツは安い挑発を繰り返す。
俺は密かに短剣を握り締めていた右手に力を込める。
ッ……落ち着け!
挑発って分かり切ってるじゃねぇかッ……!!
「どうした、かかってこないのか??よもや、その腰に差した短剣は飾りではあるまい」
俺が挑発にのって先に剣を抜けば、相手も応戦と言う名目で刀を抜いてくるはずだ。
そうなれば多分、悔しいが今の俺に勝ち目はねぇ。
なら――――……チャキッ
「ほぅ、やはり剣を抜いたか。……貴様、何をしている??」
一々間に触る声に耳を貸すことなく、俺は鞘から抜いた短剣を左の掌にはしらせた。
血が滴り落ちる掌で、首に掛けてあるシルバーのチェーントップを握り締める。
途端に巻き起こる突風と、身体を血が駆け巡る感覚。
「てめぇ相手じゃ、力の解放が必要だと思ってな。わりぃが、余裕かましてると痛い目みるぜ??」
力の解放により相対するソイツと同じ紅に染まった双眸で相手を睨み付けながら、俺は短剣を構えた――――……