†Bloody Cross†


「力の解放か……。多少は強くなったようだが、それがどれ程のものか確かめさせてもらおう」


一度収めた日本刀を再び緩やかな動作で鞘から抜き取ると、相対する双方が刀と短剣を本気で構えあう。

間合いを詰めることなく、相手の隙を狙うように互いが姿を見据える。






――――ザアァァ……キィィン!!






何の前触れも無く吹いた風を合図に、互いが一気に間合いを詰める。


「くっ……!!」


つばぜり合いに負けたのは、狐姿の男のほうで……。

永遠の一撃は的確に相手を捉え、頬に鋭い真一文の傷を付け、永遠自身は相手の攻撃を寸ででかわしていた。


「貴様の力の解放とやらは伊達ではないようだな。俺が油断していたとはいえ、短剣で傷をつけた奴など貴様が初めてだ」


頬にできた真一文の傷口から伝い落ちる血を、手の甲で拭いペロリと舐める。

その瞳は愉快そうに揺らいでいた。


「だから言ったろ?余裕かましてると痛い目みる、ってな」






そう呟いた瞬間、俺は誰かがこちらに近づいてくる気配を感じた――――……


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