†Bloody Cross†
確かに俺達がいるここに近付いてくるその気配は、一度感じたことがある。
「蒼……??」
そう独り言のように呟けば、目の前に居る狐姿の男は溜め息を吐いた後、刀を収めた。
「決着をつけたかったが、どうやら時間切れのようだな」
ソイツが太刀を鞘に収めたため俺も短剣を収め、ゆらりと俺の方に近付いてくるソイツを見つめる。
俺の警戒を余所にソイツは俺の横を通り過ぎると、木に背を預けるように座らせていた少女を容易く横抱きにした。
ぐったりとしていて少し顔色が悪い少女に瞳を向けると、スッと目を細める。
「俺は九尾の妖狐である白夜だ。貴様に興味が湧いた故、名乗りを聞いてやる」
「とことん偉そうだな、てめぇは。……俺は冠咲永遠だ」
互いに口端をあげ、どこか挑発的で楽しげな笑みを浮かべる。
「冠咲永遠、か。フッ……永遠、また会い見える時を楽しみにしている」
風に流れるように緩やかに紡がれた言葉と共に、白夜は少女を抱えたまま木々の奥へと消えていった――――……