†Bloody Cross†
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――――――…………
『お願いだからッ……もう、帰って!!もう……誰も殺したくないの……っ、ふぇ』
月光が微かに届いている宵闇の中、瞳から溢れだす涙を拭うこともせずに、あたしは叫ぶように懇願した。
滲む視界の先に映るのは妖を統べる獣耳に九尾を持った着物姿の、妖狐一族の長……白夜。
涙で歪む視界では彼がどんな表情をしているのかなんて分からなくて……
辛うじて紅い双眸があたしを見つめていることだけは理解できた。
――――カラン……
近日の無理な身体の駆使のせいか、緊張の糸が切れた途端、指先から……全身から力が抜けていく。
同時に白夜の首筋に突き付けていた剣も指から擦り抜けていき、あたしは地面にへたりこんでしまった。
俯けば視界が自分の銀髪で遮られて白夜の動向が見えない。
見えなくてもいい……
このまま死ねれば、きっと楽になれるから……
しばらくして、ジャリっと地の砂が擦れる音が近付いてきて覚悟を決めれば、フワリと百合の薫りがあたしを包んだ……