†Bloody Cross†


『泣くなとは言わぬ。我慢をするくらいなら、泣いてしまえばいい』


身体全体に感じる圧迫感に思わず顔を上げれば、あたしを見下ろす紅い瞳と視線が絡む。

体躯の差のせいで、白夜の腕にあたしの身体はすっぽりと収まった。


『何する、の??』


仮にも敵なはずなのにあたしはあらがうこともせず、ただ身を任せる。

ただ一言そう問えば、白夜は肩に回していた腕を緩め、あたしの涙を拭った。


『泣くなら胸くらい貸してやる。今、目一杯泣いてしまえ』


『ッ……敵のくせに』


偉そうな口調からは想像も出来ない柔らかい白夜の微笑みに、顔が熱くなっていく。

白夜に聞こえるように呟いても白夜は何も言わずに、ただ背中を撫でるようにさする。


『うぁっ……ふぅ』


久々に感じる人の暖かさに、敵であることも忘れて堰を切ったように涙が流れてきた。

皺が着くのも気にせずに白夜の着物を握りしめ、染みが着くのも気にせず胸元に顔をうずめる。






夜明け近くまで泣き続けたあたしに、白夜は本当に一晩中付き添っていてくれた――――……


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