†Bloody Cross†
"仲間の仇討ち"……
永遠の言葉を口には出さず、胸のうちだけで繰り返す。
繰り返すうちに、永遠が言わんとしている事を理解する。
「殺されたヴァンパイア達の仇討ちで……あたしを殺そうって??」
「さすがに理解が早いな……」
剣をかまえるあたしに切っ先を向け、永遠は再び短剣をかまえる。
「協定の話は嘘?あたしを殺す隙を作るために騙したの??」
ピリピリと張り詰めた空気の中、強く問い掛ける。
あたしの質問に永遠は小さく首を横に振る。
「いや……仇討ちは俺個人の目的だ。協定は俺じゃなくて、"冠咲家"と結んだってことになってる」
永遠は一度言葉を区切り、少し瞳を伏せて次の言葉を紡ぎだした。
「蒼が死ねば協定を結ぶ必要は無くなり……俺が死んでも協定に影響は無い」
……影響がない??
死への恐怖とか無いの??
ほんと……変なヴァンパイアね。
フッとあたしの口元に笑みが浮かぶ。
「捨て身の仇討ち、ってこと?"表世界"で生きてきた割には大胆なことするのね」
あたしはその言葉と共に、永遠の懐に剣をかまえたまま入り込んだ。
――――ヒュンッ……
「……くっ!!」
剣が風を斬る音が聞こえる。
あたしが的確に心臓を狙い斬り付けた剣を、永遠は身体を反らしギリギリでかわす。
その様子を見ていると、思わず口元に笑みが浮かぶ。
「意外といい動きしてるわね。でも……」
反らした体制を立て直そうとした永遠の動きは、さっきに比べ遅く、短剣は永遠の手から滑りおちた。
「――――遅いわ」
「……っ!!」
あたしは振り上げた剣を、永遠に向かって躊躇無く振り下ろした。