†Bloody Cross†
刹那の言葉に、あたしはたいして驚きもせずに……ただ目を伏せた。
彼が影で敵を殺そうとしたのは……何回目?
そのたびにあたしが彼を諭すことが繰り返される。
「……刹那には人を殺してほしくないの。だから、もう」
もう……"殺そうとしないで"
「俺だって蒼の役に立ちたいと思うんだ」
あたしの願いに、刹那が切なげに呟いた。
「刹那は十分……!!」
久々に聞いた"刹那の本当の言葉"に、あたしは一瞬戸惑う。
彼の言葉はまるで"自分は役立たず"だと言っているようで……。
あたしが否定の言葉を口にしようとしても、すぐに遮られる。
「"俺の力"は無くても困らないだろ??」
悲観的な言葉はまるで"自分は必要ない"と言っているように聞こえる。
あたしを見つめる瞳には暗い闇が広がっている。
「そんなことない。あたしには"刹那の力"も刹那も必要なの」
闇に揺れる瞳を強く見つめ返しながら、あたしはキッパリ告げる。
闇に光がやどり、刹那はバツが悪そうに目を逸らした。
「……っ、わりぃ。頭冷やして、冷静になってくる」
あたしの頭をクシャっと撫でると、白衣を翻し彼は森に消えていった。