この想いを君に… −三つ子編−
去年チャンピオンのむっちゃんに勝つのは難しい。

そして成長が著しい智道。

俺の前には大きな2枚の岩があって簡単に進む事は出来ない。



「さ、頑張っておいで」

金曜日のスポーツ走行で俺の肩を押してくれたのは至さんだった。

病気じゃなければ、俺の肩を押してくれたのはパパだったに違いない。

パパは後ろで苦しそうに肩で息をしている。

マシンに跨がる寸前にそっとパパを見るとパパは少し微笑んで頷いてくれた。



もう、俺の肩を叩いて送り出してくれる事も。

レースに関してアドバイスをしてくれる事も。

ない。



ただ、俺がどんな走りを見せるか。

見守ってくれるだけ。



それも、もう…



色々な事が頭の中を巡る。

泣きそうになるのを怺えて俺はアクセルを開けた。
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