この想いを君に… −三つ子編−
行き先は隣の部屋。

パパはもう、眠りについていた。

いや、また夜中に目を覚ますのだろう。

「どうしたの、知樹?」

ママは少し疲れた様子を見せた。

「うん…」

俺はママの隣に座る。

「オッサン共がうるさい」

ママは少し笑って

「みんな知樹の彼女だって思ってるから思わずからかいたくなるのよ」

いい迷惑だよ。

「…でも」

ママはちらっと俺を見る。

「可愛い子ね。知樹が好きになるのもわかるかも」

どういう基準で言ってるんだろう。

「パパ、知樹が幸せな恋愛をして欲しいって言ってたわよ。
…羽曳野さんなら家族に連れられてここに来てるけど八尾さんは一人でここまで。
そこまで思ってくれる女の子ってなかなかいないわよ。
上手くいくといいわね」



確かに。

八尾は来てくれた、一人で。

俺の事が好き、だから?

…いや、でも思い出作りって言ってた。

でも、本当にこんな遠い所まで一人で…



じゃあ、俺も頑張らないとな!



そういう想いに応えたい。



レースで初めて、他人の為に勝ちたいと思った。
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