この想いを君に… −三つ子編−
「おめでとう」

微笑まれて、俺は頷くしか出来なかった。

晩夏の、どことなく淋しさを漂わせる日差しが八尾の顔を照らした。

「あのさ…」

ちらっと振り返るとパパが微笑を浮かべて遠くから俺を見つめている。

でもすぐにママと学さんに連れられて休憩所に向かって行くのが見えた。

かなり疲れているみたい。

それでも、俺がどういう行動を取るのか見ていたみたいだ。

「ちょっと、いい?」

もうすぐJSBが始まる。

出来るだけ手短に済ませないと。

「どうしたの?」

目を丸くする八尾を手招きして、人通りの少ない場所に連れて行った。

「もし優勝したら、俺はしようと思っていた事が一つあるんだ」

ゆっくり深呼吸をして八尾を見つめる。

八尾も真剣な眼差しを俺に返した。



遠くからアナウンスの声が聞こえてポールポジションの祥ちゃんの名前が呼ばれていた。

一瞬、そちらに耳を傾けたけど、すぐに八尾に気持ちを戻す。



「俺、ずっと自分の気持ちがわからなかった。
いや、ごまかしていただけなのかも」

ああ、最初から言い訳。

これじゃいけない。

頭を軽く振って八尾を見つめる。



「俺、八尾の事が好きだ」
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