この想いを君に… −三つ子編−
第5章 激動の秋

− 桜 −

いつの間にか凄く注目されている自分がいた。

世界ジュニア選手権で強豪ロシアの選手に勝ってしまった。

優勝。

本当に運が良かっただけ。

あとはコーチのアンナ。

彼女がいるから、頑張ろうって思う。

それだけ、なのに。



「彼氏?」

練習が終わって体育館を出た所でメールを打っていた。

後ろから声を掛けてきたのはアンナ。

「うん」

私が頷くとアンナは苦笑いをして

「最近、綺麗になってきたよね」

流暢な日本語でアンナは言った。

「ただ…」

アンナは目線を闇の向こうに送る。

私も見ると闇の向こうがカサカサと動いた。

「今の桜はアイドル並の人気だから…
本当に気をつけてね」

「うん、ありがとう」

私はケータイを閉じた。

そしてアンナと二人、歩き出す。

最近、練習が終わるとアンナが家まで送ってくれる事が多い。

アンナの家は私の家から2分ほどのマンションの一室。

用心の為に余計に。

マスコミに取り上げられるのもあるけどそれ以上に怖いのはストーカーに近い行動を取る人達。

本当に危険だ。
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