この想いを君に… −三つ子編−
「偶然、本屋で知樹と会ったんだ」

私の部屋に智道くんを案内する。

「今年は残りのレースも最終戦だけだから、後の時間は勉強に充てるって」

残念そうに言う智道くん。

確かに今年は不況の影響で、レース自体も見合わせる話だったけど、何とか出たスポット参戦で確実にポイントを取った知樹は最終戦には出られる事になった、とは聞いている。

「俺はあと、残り2戦だけど、知樹達がいないと寂しいね」

「そっかぁ」

私はベッドに腰を掛ける。

智道くんもその隣に座ると少しため息をついた。

「…最近、マスコミの取り上げられ方が酷いよね」

ケータイを取り出すと智道くんがとあるサイトを私に見せた。

−門真 桜の彼氏ってバイクのレースしてる人?−

−そうらしいね〜−

掲示板のカキコミか。

−え、誰?−

−確か高校生だったと思うけど…。名前忘れた−

−へえー、見てみたい−

「…これだけ書かれてるとバレるのも時間の問題だな」

智道くんは大きくため息をついた。
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