この想いを君に… −三つ子編−
「だから、今まで以上に気をつけないとね…」

智道くんの目が悲しそうだった。

「ますます会えなくなっちゃうかな」

そんな事を言われたら…私は慌てて顔を上げた。

「そんなあ…」

どちらもオフシーズンに入れば。

会う回数も増えるだろうって思っていたのに。

「僕の親が感づくのも時間の問題と思う」

「…うん」

一番怖いのはそれだ。

「そうなればますます厄介だし…
また会いたくなったら知樹に機会を作って貰うよ」

智道くんはどうしようもない状況に唇を噛み締めていた。

「…誰にも構われたくないのに」

そんな言葉が聞こえたかと思うと智道くんは急に私を抱きしめる。

突然の事でビックリしたけれど…

「もし、予定が重ならなければ…
最終戦、見に来て欲しい。
僕に直接会わなくて良いから、あの空間に一緒にいてくれるだけでいい」

智道くんの腕が微かに震えている。

初タイトルが懸かっていて、意識しない訳がない。

「…その日は多分、行くよ」

むっちゃんや知樹も出るから。

チームに付いて行けば私がそこにいても不審がられる心配はない。

「…ありがとう」

その瞬間、智道くんの唇が私の唇に重なる。



これが最初のキスだった。
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