この想いを君に… −三つ子編−
羽曳野はチラッとこちらを見て立ち去った。

表立って付き合っている事を公表していない。

そんな事をしてミチルが嫌な思いをするのには耐えられない。

羽曳野も薄々は気付いているはずなんだが。

…わざと気付かないフリかもしれないけど。

まあ、いいや。



「…そういえば」

俺はミチルを見つめた。

「学校は決めたの?」

その瞬間、少しひんやりとした風が吹く。

俺は思わず首を竦める。

季節は秋。

朝晩の冷え込みが極端になってきて、昼間はまだ暖かいけれど、今日は少し肌寒い。

「…うーん」

ミチルが難しそうな表情を浮かべた。

「知樹と一緒の所にしたいんだけど、あと一歩、及ばない」

うん、それはわかってる。

「苦手は何?」

「数学と理科」

俺の得意分野か。

「最終戦、終わったら一緒に勉強する?」

俺もミチルも今時珍しい、塾には行ってない派だ。

…俺の家はみんな行ってないけど。

塾に行く余裕なんて。

全くない。

普段している活動にお金が掛かりすぎて、勉強にまでお金を回せない。

「図書館でも俺の家でも。
どちらでもいいよ。
ミチルに合わせる」

そう、それくらいしか出来ないけど。

「…いいの?」

ミチルの目が輝いた。

「うん、それくらいは協力する」

そう言うとミチルは弾けそうな笑みを俺に向けた。



ようやく『彼氏彼女』っぽくなってきたぞー!!
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