この想いを君に… −三つ子編−
「ほんの数分の、些細な出来事。
…だけど私にとっては大切な出来事だったな」

一瞬、静まり返る部屋。

その場にいた全員がママを見つめた。

「むっちゃんが2歳くらいだったかな。
そーちゃんはむっちゃんが寝た隙にせっかく雪が降っているのだから外に行こうって。
寒いしむっちゃんが気になるから私は嫌だって言ったけど、そーちゃんに負けた」

それは俺の知らない話。

俺も泰樹も桜も生まれる前だし、むっちゃんも知らないらしく、ポカンとしていた。

「そーちゃんと二人、手を繋いで歩いて公園まで行って、二人だけで雪合戦。
周りで見ている人がいたら呆れ返りそうなくらい、はしゃいで…」

ママは少しだけ微笑んで窓の外を見つめた。

雪は一段と激しく降り始めていた。
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