この想いを君に… −三つ子編−
「桜、ちょっと」

パパが仕事から帰ってきて、私は部屋に呼ばれた。

「あのさ、進路の事なんだけど」

その件については先日話しましたよー?

私は通信制の高校に行きます、って。

「本当に良いの?通信制で…」

パパの目は複雑な表情を見せていた。

「うん、そうじゃないと世界は狙えない」

普通の高校生活に憧れない訳ではない。

でも私には新体操しかない。

しかも世界への、頂点への階段を昇り始めている。

それにコーチは。

私に新体操を教えてくれたアンナ。

これは運命としか言いようがない。

私はこの運命に掛けるから…

普通の高校生活はいらない。

「桜は夢に手が届きそうだからそれもありだよな」

パパはため息をつく。

…あれ?反対しているのかと思いきや。

反対していない。

「知樹…本当に良いのかな」

パパの不安そうな瞳が私の胸に突き刺さった。
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