この想いを君に… −三つ子編−
「私、パパがバイク好きで高校卒業したら本格的に働いてレースに出てたのかって思ってた」

私はパパの隣に座る。

「でも大学行きたかったっていうのが聞けて…少しホッとした」

そう言って微笑むとパパは不思議そうに首を傾げる。

「だって…私からすればパパの人生ってバイク一辺倒でその世界しか…本当にその一部分しか知らないのかって思ってたから。
案外パパって広い目を持ってたんだなって」

「…何、それ?俺が狭い人間みたい」

不快感丸出しのパパ。

「それを言うならママだよ」

私とパパはママを見る。

「何で〜???」

ママは頬を膨らませていた。

「だって高校卒業して俺とすぐに結婚してバイク屋とバイクのレースと子供の事しか知らない」

「充分じゃないー!!」」

ママはパパを後ろからギュッ、と抱きしめた。

パパには見えないけれど、ママが切なそうにしている。

ママから抱きつく事って今まであまりなかったから。

パパはもう、ママを抱きしめられないくらい、腕の力が落ちているから。



胸が痛い。

私は立ち上がって部屋を出た。
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