この想いを君に… −三つ子編−
「パパもなんで俺に言わないんだろ…」

知樹は落ち込んでいた。

知樹にとってパパは絶対的な存在だから。

「そんなの」

むっちゃんは当然!という顔をして言った。

「知樹の早くお店を継ぎたいっていう想いをパパは知っているからよ。
でもパパは知樹が本を読んだり、頭が賢いのも知っている。
だから桜にそれとなく言ったんじゃない?」

知樹は頭を抱えて黙り込んだ。

確かに3人とも高校に進学すればお金はかかる。

みんなそれぞれスポーツやら芸術に打ち込んでいるからその活動を認めてくれる私学に行くだろう。

だったら尚更大変。

けれどパパは。

そういうお金は用意してあるって言っていたし。

実際準備もしていたと思う。

「…知樹」

むっちゃんは複雑な表情を浮かべて

「パパは…別にお店を継いでもらうとかそういうのを望んでいないかもしれないよ?」

「じゃあなんでむっちゃんは高校卒業したらお店で働くの?」

あわわ!!何だか喧嘩にでもなりそうな雰囲気!!

「あたしはあくまでレースの為だよ。
パパの為じゃない、自分の為」

むっちゃんは真剣な瞳を知樹に向けた。

知樹は一瞬、息を飲んだ。
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