その、声。
「晶、メアドの件よろしく!」
「無理に決まってんじゃん…って聞いてないし…」
放課後、イケメン好きらしい優衣が楽しそうにあたしに言い放ち、教室を出て行った。
ザワザワと騒がしい廊下を見れば、もう優衣の姿はなかった。
どんだけ速いんですか。
はぁ…と、ため息をつき、生徒会室へと足を向けた。
あ、あれは。
人の波から見えた茶髪の男に声をかけた。
「まっきー!
おはよーっ」
「まっきー言うな。
それと。おはよう、じゃないだろ」
そんなコトも分かんないのか。
と、バカにしたような顔と声で振り返る。
田淵真希(タブチ マキ)。
幼稚園からの腐れ縁で、わりと家も近い。
「まっきー、髪染めちゃったの?」
「完全に聞いてないよな、俺の話。」
並んで歩き出し、まっきーを見上げて言った。
「部活だよ、部活。
髪、焼けんの。」
ヤレヤレ、そう聞こえてきそうな口調だ。