記憶 ―砂漠の花―[番外編]
リフィル様は本当にお優しい方で、泥んこのアタシをお風呂に入れてくれたわ。
これは皆には内緒よ。
お膝の上で、布で丁寧にアタシの毛を拭いてくれながら、彼女は言ったわ。
「タビちゃん綺麗になって良かったわね?」
ニャァ…
『有り難うなにょよ。汚くて泣きそうだったにょ。』
こんな優しい話し方をする人が、この国の皆を苦しめているなんて絶対違う、とそう思ったの。
ご主人様の予想通り、黒幕は違う人。
そう確信が持てた。
だけど…
全部言ってしまいたかったけど、アタシはご主人様の事は言わなかった。
言葉も、アタシなりに頑張って探して話したの。
ボロを出さないように。
…それは、
正解だったの。
楽しいお話をいっぱいしたのよ。
アタシがお風呂が好きとか、
バカにされてるみたいで、アタシは猫じゃらしは嫌いとか。
アタシの天敵の話とかね?
……あれ?
…アタシの事だらけにぇ。
でもッ!
リフィル様は、ずぅっと楽しそうに微笑んでたわよ?