記憶 ―砂漠の花―[番外編]

マルクがそう手を差し伸べると、リフィル様は唇を噛んで抵抗の言葉を発したの。


「……嫌よ…」

「困った方ですね?じゃあ、遠慮なく…」


マルクは、手の平を彼女に向けた。

アタシには見えなかったけど、魔力で何かしたに違いなかった。


アタシを包んでいたリフィル様の手が、だらん…と力をなくしたのだから。

アタシは彼女の顔を見ようと頭を上に向けた。


『…リフィル様…?』

「…………」

返事は返らない。

彼女の瞳は、どこを見ているわけもなく、ただ虚ろに開いていただけ。


ニャァ…!
『…おじしゃん、何したにょ!?』

アタシはそう訴えたのだけれど、マルクは気味の悪い笑みを浮かべてるだけ。

無視したの、
このアタシをッ!


「さぁ、行きますよ?猫ちゃんは、ここにいなさいね…?」


リフィル様はアタシが膝にいる事も構わずに急に立ち上がる。

アタシは膝の急激な角度の差に床に飛び降りた。


『…どうしたにょ!?』

アタシに一度も振り返らず、彼女は部屋を出た。
マルクとともに…。


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