記憶 ―砂漠の花―[番外編]


翌朝…

アタシは、初めてのお泊まりだったから、ちょっとご主人様が恋しくなっていた。

ホームシックってやつね。
仕方ないじゃない、
子供だったんだから!


「…タビちゃん?元気ないのね?」

もらったミルクを舌で飲みながら、アタシは話す。


『アタシ、帰ろうかしりゃ…』


もう、アタシの役目…果たしたんじゃないか…。


無理はしなくていいからな?

そう言う優しいご主人様のお顔が頭にちらついた。


「…そう。寂しくなるわね…」

リフィル様の残念そうなお顔に、心がぎゅっとなった。


そんな時だった。


「おや…猫ちゃんはお帰りですか…?」

夕方しか現れないはずのマルクが部屋に現れた。

アタシはとっさにリフィル様の膝に飛び乗る。


「寂しいなら…私が話し相手になりますよ…?」

そういつも通りの笑みを浮かべてマルクは言った。


「何をしに来たの!?用はないはずです!」

リフィル様は怒鳴ったわ。

マルクは、ふふふっ…と意地悪そうに笑いながら、
でも瞳は悲しげで。

アタシの中で、昨夜のマルクと重なった。


アタシ、何だか分からないけどマルクが一瞬可哀想に思えてしまって…

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