記憶 ―砂漠の花―[番外編]
アタシが暴れても暴れても、マルクには勝てなかった。
疲れるだけだから暴れるのをやめたわ。
変な、暗い階段みたいな所を降りながら、マルクは言った。
「あなた、昨夜…もしかして起きていましたか…?」
…みゅッ!?
アタシの心臓は不覚にもドキッと高鳴ってしまった。
マルクはそれを聞き逃さなかった。
「…やはり…聞いていましたね…?」
ニャァ…
『にゃに言ってりゅにょ?ぐっしゅりよ?』
マルクはまた嫌な笑い方をした。
「…まぁ…いいでしょう。子供には分かりません…」
どうゆう顔で言ったか、アタシの位置からは見えなかったけれど。
『どこに行くにょよぅ!?』
マルクは何も言わなかった。
アタシは怖くなって、身を縮めた。
マルクの、
深い闇、憎しみ、悲しみ。
捕まえられた手からアタシに伝わってくるようで、怖かったの。
…こにょ人…怖いよ…
アタシ、どうにゃりゅにょ…?
どこ行くにょ…?
アタシは目に涙を溜めて震えだした。
このまま、どこか連れていかれて出してもらえない。
もうご主人様に会えないんじゃないか。
アタシは目を閉じた。