記憶 ―砂漠の花―[番外編]


アタシが再び目を覚ますと、もうお日様が陰り始めていた。


…ぅにゅ?
また知らにゃいお部屋…


本がいっぱいある、埃っぽいお部屋だった。


「…目が覚めましたか?」

…マルク!

アタシは立ち上がり身を彼から遠ざけた。


『アタシ帰りゅわよ!』

マルクは本棚の前に立ち、本のページを開きながら言った。


「本来なら、侵入者を黙って帰すなんて馬鹿げた事をしないのですが…」


マルクは続ける。


「リフィル様にせっかく出来たお友達ですからね…。特別に逃がして差し上げましょう?」

『…本当!?』

単純なアタシはパァッと表情を輝かせた。


やっと、
ご主人様に会えりゅわ…
アタシ頑張ったにょよ?
たくさんたくさん、
誉めてもりゃわにゃくちゃ…!


マルクがあの怖い笑顔をアタシに向けた。


「ふふっ…。さぁ…もう日が暮れる。私はお仕事です。」

また、リフィル様の所へ行くのね?とアタシは思ったけど言わなかった。


「私の気が変わらない内に、あなたも早く『ご主人様』の元へお帰りなさい…?」

ふふふ…、とマルクは何か言いたげに笑う。

アタシはゾクッとした。

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