記憶 ―砂漠の花―[番外編]
俺は、
よく同じ夢を見る。
…また、だ…。
砂漠…
黄色の砂の山が、
音もなく、さぁ…と崩れる。
崩れかけた灰色の壁。
…これは、城壁だろうか。
その前には、
砂漠に似つかわしくない花たち。
…花壇だ。
ヤシの樹。
白い花、黄色い花。
紅い…花…
その花壇の前に、
佇む黒い髪の女性…。
俺は…、
その女性を、後ろから静かに見つめている。
この気持ちは、
……何だろうな。
せつない、苦しい…
触れたい…
そう伸ばしかけた手を、
握りしめて、
力なく、下におろす。
触れたい、
抱き締めたい。
『…アズ…』
君の青い瞳が、俺に向いた。
……なぜ、
俺の名を知っている…?
『…アイリ…』
俺が、彼女をそう呼んだ。
知らないはずの彼女。
知らないはずの彼女の名前…。
『…もうすぐだよ…』
そう優しく微笑む知らないはずの彼女は、なぜか懐かしく…
俺の心を締め付けた。
愛しい、
抱き締めたい…
あの笑顔を、
俺の胸に、閉じ込めたい…
…アイシテル…