記憶 ―砂漠の花―[番外編]
また…、
場面が飛ぶ…。
ここは、泉…?
夢の中の俺が、
あまり周囲を見回さないので、ここがどんな場所かは、分かり辛い。
哀しい。
ただ、それだけ…。
視界の隅で、
水面が月に照らされて光る。
沢山の大人たちに囲まれて、
俺がいる。
俺の目線から見て、
彼らがとても大きく見えて、
自分が幼いんだな、と確認する。
中には怪我をしている人も大勢いる。
大人たちの顔は…、
暗く、
疲れているようだ。
…なんだろう?
戦争、なのか…?
『ちちうえ!そとからなきごえがします!』
俺は急に立ち上がり、
父と思われる人物にそう言うと、
駆け出した。
岩のトンネルをくぐり抜け、
外には、
夜の砂漠が拡がっていて、
月明かりに照らされた、
小さな人影が、
ひとつ…。
『…おんなのこ…?』
俺が見つめていたのは、
黒い髪に、青い瞳の、
あの子だった。
『ひとりなの?おなまえは…?』
名前を聞いても、
首を振り、
母親がいないのだ、
と、わぁわぁ泣き続ける。