記憶 ―砂漠の花―[番外編]



『なまえ、わからないんだね?じゃあ、きみはアイリ。きょうから、オレのいもうとだ。』


大きな、
深い哀しみに囚われていた、

俺の心が…

ほっ…と和らいだ。


俺は嬉しくて、
目を細めながら、

その子の頭を撫でていた。



これが、

あの子との、
初めての出会いなのかな…?




コレガ…

ウンメイノ、ヒ…



懐かしく、
嬉しくもあり、

苦しい。

胸が、痛い…。



…運命…――?




夢の中の俺が、

君に触れ続けたその手は、
いつも優しかった。


その手に撫でられた君が、
俺を見上げる青い瞳は、

何気なく、とても強く。


いつも反対に癒されていた。
いつも守られた。

そんな気がするんだ…。



君は、

俺の夢の中で、
儚く揺れる一輪花。



夢の中の君に、

恋心を抱いてしまう俺は、

この先どうしたらいい?


行き先のない想い。
届かぬ想い。

現実では、溜め息ばかり。


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