記憶 ―砂漠の花―[番外編]
アタシは、とてとてとサイルの街に入った。
ご主人様から堂々と街の入り口から入るよう言われたの。
そりゃあ、猫がいきなり瞬間移動して現れたらおかしいわよね。
街の入り口を守る青服にチラチラ見られたけど、
知らん振りよ?
ニャァン…
『お散歩の帰りなにょよ?』
と鳴いてみた。
サイルの住民は、ほとんどがウィッチ。
アタシの言葉が通じてしまうから、ただの猫を演じなきゃ、なのよね。
青服の視線を背中にうけながら、大通りから民家の脇道に入った。
…ぅみゅ。
街への潜入はクリア。
大通りは目立つからダメにぇ。
裏かりゃ城へ回りましょ。
そう決意したものの…
…疲れたにゃ。
アタシは体も足も子供なものだから、お城までがなかなか遠いの。
地下道から歩きっぱなしなものだから、くたくただったわ。
『アタシの可愛いあんよも泥んこにゃ…』
ぽそっと呟く。
黒い体に白い手足。
アタシのチャームポイントの白い部分が薄汚れている。
『お風呂入りたいにゃぁ…』
猫は水を嫌うけれど。
水とお風呂は別物にゃ。