記憶 ―砂漠の花―[番外編]
「…梓、絵美カラオケだって!お友達二人と一緒。お友達もついでに送ってあげてよ。」
遊んでばかり…と溜め息をつく母親に、
「……あぁ、また奈央ちゃんかな?…了解。」
そう言って、俺は車のキーを手に取った。
ジーンズの後ポケットに財布と携帯を詰め込みながら玄関へと廊下を歩く。
「いつも悪いわね。」
そう玄関先で見送る母親に笑顔を向け、家を出た。
俺は、妹に甘い。
自分でもそう思う。
妹は俺が守らなきゃいけない。
誰に言われるわけでもなく、昔からそう思っている。
三つ違いの妹。
小さい頃に母親にでもすり込まれたのかな…?
隣の駅前のカラオケ店。
そこを目指して、俺は車を走らせた。
――ドクン。
単に妹を迎えに行くだけ。
それなのに、
俺の胸は高鳴っていた。
別に、友達の奈央ちゃんに会えるのが嬉しいからではない。
彼女は、俺のファンなのだと大袈裟に言うが、俺を美化して慕ってくれている気がして少し困っている。
俺は、慕われるような人間じゃない。
…ソウ。
愛スル人ヒトリ、守レナイ。
俺ハ、
守レナカッタンダ…
あぁ…
この台詞は、夢で聞いた。