記憶 ―砂漠の花―[番外編]
なぜ、
今思い出すのだろう。
「夢の中の俺」の気持ちが現実にまでも出てくる事がある。
いつも、
アイリ、アイリ、アイリ…
いつも、あの子。
決まって、
俺は胸が締め付けられる。
苦しい。
泣きたい。
どうしてだよ…
なんで、
こんなに寂しいんだよ…
『夢でしか逢えないから?』
テレビや写真で「砂漠」を見ても、同じ気持ち。
――ドクン。
今、まさに。
そんな気持ち。
出掛けにあの夢を見たからだ。
車の開け放った窓から、夏特有の生暖かい湿った風が入る。
俺の顔に触れる。
俺の髪を、揺らす。
大きく息を吸って、ゆっくりと吐く。
――ドクン。
落ち着かない。
『…もうすぐだよ…』
夢の中のあの子の言葉が蘇る。
あれは、夢。
あり得ない…。
そう期待を打ち消しながら、
「…とりあえず、運転に集中しなきゃ事故るって、俺…。」
ぼそっと、独り言を呟いた。