記憶 ―砂漠の花―[番外編]
カラオケ店の駐車場に車を停め、絵美にメールをした。
先程よりは、大分気持ちは落ち着いていた。
『着いたぞ。』
俺は一つ溜め息をつくと、店の扉を見つめて、車内で待っていた。
すると、携帯が鳴る。
絵美からのメールだった。
『友達が寝ちゃってて、今すぐは行けないから…、103号室!!』
………。
「…来いってか。」
俺は、甘い。
これ以上遅くなっては、親御さんが心配するだろう。
しょうがない。
寝てる子を背負ってでも、車に乗せるか…。
そう店内へと向かった。
世間は夏休み。
カラオケ屋も繁盛しているのだろう。
店員は忙しく駆け回っているらしく、幸いにもフロントには誰もいなかった。
今だとばかりに個室を列ねる廊下へと、足を進めた。
「…103…、ここか。」
――コンコン…
ドアの硝子部分を叩くと、高い音が部屋に響いた。
どうやら歌ってはいないらしく、中の黒い人影がすぐに反応を見せた。
嬉しそうにドアを開けたのは奈央ちゃんだった。
「アズ様~!迎えに来てくれたの~?」
「あぁ、奈央ちゃん…こんばんわ。いい加減その『様』ってやめてくんない?」