記憶 ―砂漠の花―[番外編]
急に。
夢が、脳裏に蘇る。
いつか見た、
遠い、
淡い「記憶」の断片――。
あの子は、
胸から血を流して、
俺の腕の中にいたんだ。
口元からも、
赤い血を流して。
それでも、
幸せそうに微笑む。
そんな、
もう動かない彼女を見つめて、
力一杯に抱き締めて。
叶わない夢だと諦めていた。
届かない夢だと諦めた。
『…こんな日が来るなんて。もし、分かっていたのなら。もっと抱き合えば良かったよ…アイリ…。』
自分が、許せなかった。
あの日。
出逢わなければ良かったね、なんて。
そんな後悔はしたくない。
どこまでも俺たちは逃げ場のない、いばらの道を歩いて、
「運命」を背負って。
薄れゆく意識の中で聞いた、
君の笑い声は、
よく聞けば風の音でした。
『どうか…永遠の愛の形を教えてくれ。この想いは、永遠に…。』
この光景が、
教えてくれるのは。
哀しい想いだけじゃない。
『…ねぇ、アズ?
…やっと、逢えたね…』
君の揺らめく瞳の向こう側に、
夢の中の「あの子」がいた。
俺も目頭が熱くなる。
泣いていた。
心が、震える……