記憶 ―砂漠の花―[番外編]


…びちゃッ。


あの塀、高くにゃい?
飛べにゃいわ、あんなの。



どこかないか、どこかないか…、水攻めに耐えながら、濡れて霞む目を懸命に開けて探した。


…あった…


――隙間、発見!


塀に少しだけの隙間を発見したアタシは、そこをめがけてラストスパートした。



――…ばしゃんッ!


『にゃぁんッ!?』

大きな衝撃が走る。

今までより大きな水の塊が、アタシの体に直撃したのだ。

アタシの体は少し飛ばされて、水滴とともに地面に落ちた。


『…みゅぅ~…!』


「へへっ、俺の勝ちだなッ!」

「ズルいぞ~!まだ勝ちじゃない!」


男の子たちの声が、バタバタという足音とともに近づく。


…捕まっちゃう…
もっと…
ひどい事されちゃう…


ニャァー…
『アタシ、負けないもん…!』

アタシは、ずぶ濡れの手足を地面に震わせながら立ち上がろうとした。


そんな時、


「――こらぁッ!!」

男の人の声がした。

男の子たちは、びくっとその身を縮める。


「猫ちゃん、可哀想だろっ!!何いじめてるんだっ!」

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