記憶 ―砂漠の花―[番外編]

駆け寄ってくる男性の姿を確認した男の子が言った。


「…やべッ、リュウ兄ちゃんだ!」

「逃げろッ!!」

『みゅ…?』


バタバタと逃げた彼らの後に残されたのは、アタシとそのお兄さん。



「…まったく、困った奴らだ…。大丈夫か?」

お兄さんはアタシに手を伸ばそうと屈んだ。

アタシは、ビクッと身をこわばらせて一目散に隙間へと身を隠した。


…こわい、こわい。
こわいこわいこわい…


ずぶ濡れの顔だけを隙間から出し、上目使いでお兄さんの様子を伺う。

怯えるアタシに彼は優しい笑顔を向ける。

この人は、アタシを苛めにゃいみたい。


ニャァ…
『助けてくりぇて有り難う…リュウさん?』

「ごめんな?ずぶ濡れだな?」


『…大丈夫よ。アタシ強い子だかりゃ。』

リュウさんは笑った。


「…そっか、ごめんな?またな、猫ちゃん。」

そう言って、アタシの頭を撫でて行ってしまった。



…サザエルの住民にもいい人はいるんだわ…。
悪い人ばかりではないのね?

アタシ、
ちょっと反省よ。



アタシは、濡れた体をプルプルと震わせ、周囲に水を飛ばす。


…さて、アタシも行くかにゃ。

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