記憶 ―砂漠の花―[番外編]
……ちょっとだけよ?
本当よ?
浅い眠りの中、
人の気配がした。
草の音、草の香りがアタシの鼻をくすぐる。
「……あら…可愛い…」
……ぅにゃ…?
アタシが可愛いのは知ってりゅわ…
ぃやね、ご主人様…
優しい手が、アタシの頭から背中を撫でた。
アタシは、うっすらと瞳を開ける。
………。
…ぅにゃぁぁあぁぁぁッ!!
心の声とは裏腹に、
アタシは目を見開いて固まっていた、と思う。
何しろパニックよ。
目の前で優しく微笑んでいるのは…
このご主人様にちょっと似ているお顔、ご主人様に聞かされていた雰囲気…
ましゃか、
ましゃか……
「私はリフィル…。猫ちゃん、お名前は?」
…本人に見ちゅかった…
……ぅ…。
『……アタシ、タビよ…』
ご主人様、ごめんなしゃい。
こりぇは事故よ…?
そう心の中で謝ったわ…。
「あらあら…タビちゃん泥だらけね?一緒にいらっしゃいな。綺麗にしてあげるわ。」
どうしよう、
どうしよう…
と固まっている内に、アタシは簡単に抱き上げられてリフィル様に連れていかれてしまったのよ。