ダンデライオン~春、キミに恋をする~
あたし、もしかして……もしかしなくても。
「……な、成田くん……」
「じゃ」
成田くんは、爽やかな笑顔を残して校舎の中に消えて行った。
「…………」
あたしはぼんやりと、立ちすくんでた。
動き出せずに、ただ成田くんが消えてった校舎を見つめることしか出来なくて。
ドキン
ドキン
ドキン
その時、ポケットで再び携帯が震えた。
ぼんやりしたまま、通話ボタンを押しそれを耳に押し当てた。
『――シィ!
マジでどこにいんのっ? 始業式だけじゃなくてHRも始まっちゃうじゃん。 いい?シィは2-F! わかったらさっさと教室においで。 あたしら同じクラスだからねっ』
「……」
『ちょっとぉ、シィ? 聞いてる?』
「……どうしよう」
『シィ?』
手に持ってた携帯をギュッと握りしめる。
ドクドクうるさい心臓は、ずっと鳴り止まなくて。
あたしの体全体に、その血をめぐらせる。
「……沙耶っ、どうしよう! あたし……恋したかもっ!」
『はああぁ?』
どんどん加速していくこの胸の高鳴りが、もうなによりの証拠だよ。
あたしは、今日初めて会った『成田響』に、恋をしてしまった。